禁煙したいのにやめられない…禁断症状が出るのはなぜ?禁煙を成功させるには
以前からタバコは、健康に悪影響を与えるものとして知られていました。加えて最近は、たばこ税の増税によって費用面の負担が大きくなっています。健康について、そして費用面の負担について考えた時、「禁煙したい」と思うのは自然なことです。
禁煙について、タバコを吸わない人にとっては、「タバコを吸うのをやめるだけ」というごく簡単なことのように思えます。しかし、喫煙者にとっては違います。タバコを吸うこと自体はやめられても、その後、禁断症状(離脱症状)に悩まされます。そして、結局また吸ってしまうという方が大半です。
こちらでは、禁煙時に現れる禁断症状について、原因や具体的な症状、対処法について解説します。
禁断症状が出るのは「ニコチン」が原因
喫煙者がタバコをやめようとすると、イライラする、落ち着かないなどの禁断症状が現れます。なぜ禁断症状が現れるのでしょうか?その原因は、タバコに含まれている「ニコチン」にあります。
ニコチンは、タバコに含まれる有害物質のうち、三大有害物質と呼ばれるほど問題視されている物質です。なぜならニコチンは、とても依存性が高く、一度でも吸い込むとニコチン依存症になってしまう可能性が高いためです。
ニコチンを吸い込むと、脳は快感を生じさせる物質「ドーパミン」を放出します。このドーパミンによる快感が癖になり、繰り返しニコチンを吸いたくなる、つまりタバコを吸いたくなってしまうというわけです。そして、ニコチンが切れると禁断症状が現れてしまうのです。
一説によると、ニコチンの依存性の高さは、麻薬で有名なヘロインやコカインと同等、あるいはそれ以上だと言われています。ヘロインやコカインなどの麻薬を使用すると、病院で治療を受けなければ依存症からの脱出は難しいですよね。そう考えると、ニコチンの依存性の高さがどれだけ恐ろしいか、よく分かります。
ニコチンについて、詳細は別のコラムで解説しているので、そちらの記事も併せてご覧ください。
どんな症状があるの?対処法と併せて紹介
それでは、ニコチンが切れた時にはどのような禁断症状が出るのか、代表的な症状の例と、症状が現れた時の対処方法を確認していきましょう。
■イライラする
禁煙時の禁断症状として、もっともよく知られています。禁煙した翌日から、長いと3週間ほどイライラが続きます。
《対処法》
タバコを吸えずイライラしていると感じたら、ゆっくりと深呼吸をしたり、水やお茶を飲んだりして、心を落ち着かせましょう。音楽を聴くなど、リラックスできる時間を設けることもおすすめです。
イライラする状況に陥らないような環境づくりも大切です。例えば仕事をしている方なら、禁煙してから1週間程度は、仕事を抱え込みすぎないように気を付けましょう。
■集中力が低下する
禁煙した直後から、約3週間続きます。脳がニコチンに慣れてしまっているので、ニコチンが切れている状態では、脳が上手く働かなくなっていることが原因です。特に、仕事に大きな影響が出ることが問題視されます。
《対処法》
集中力が低下している時は、思い切って10分ほど休憩をしましょう。リフレッシュすることで、集中力を取り戻せる可能性があります。事前に禁煙の予定を立てているなら、仕事量を減らすなどの対策をとることも有効です。事前の対策が難しい場合、集中力が低下している間は単純な作業を進めるなどの工夫をしましょう。
■眠れなくなる
眠れない、あるいは寝てもすぐに目が覚めてしまうなど、不眠の症状が現れることもあります。症状は、だいたい禁煙した直後から1週間くらい続きます。不眠が続くと健康にも影響が出るので、注意が必要です。
《対処法》
夜、しっかりと眠れるように、日中に体を動かしておきましょう。適度に体を疲労させることで、夜、眠りやすくなります。就寝する1時間前にぬるめのお湯に浸かると、副交感神経が優位になり、心身がリラックスした状態になるため、寝つきが良くなります。コーヒーや紅茶など、カフェインが含まれる飲み物は脳を覚醒させてしまい、いっそう眠れなくなってしまいます。夕方6時以降は、カフェインが含まれる飲み物を飲むのは避けましょう。
■頭痛がする
頭痛は、ニコチンの持つ血管収縮作用が関係しています。タバコを吸うと、血管収縮作用により、一時的に血管が収縮します。その後、ニコチンが切れると血管が拡張。これを繰り返すことで、頭痛が起こるそうです。禁煙した直後から、長いと2週間程度続きます。
頭痛がする時は、頭痛薬を飲みましょう。水分をたっぷりとるのも効果的です。自宅で仮眠をとれるような状況なら、足を高くして仰向けに横になるのも効果的です。この他にも食欲が増す、不安を感じる、気分が落ち込むなどの症状が現れることも。そして、このような禁断症状を抑えたいために、タバコに手を出してしまうケースが多いです。
どの症状も、ピークは禁煙してから2~3日です。禁煙をして1週間ほどは、リラックスして過ごせる環境を整えることで、禁煙を成功させやすくなります。
「徐々に減らす」はNG!正しい禁煙方法
ご紹介したような禁断症状が出ることから、禁煙する時は、徐々に本数を減らしていくほうが、ストレスが少なく禁煙しやすいように思えますよね。しかし、実は少しずつ本数を減らすという禁煙方法は間違いです。「1本だけなら」「今日はこれだけ」という気持ちで吸ってしまうと、吸いたいという気持ちを抑えられず、どんどん本数が増えてしまいます。どれだけ禁断症状に悩まされても、禁煙する時は一気に吸うのをやめるのが、正しい禁煙方法です。
最近注目されている加熱式タバコに変更するのも、完全な禁煙を目指す方には、おすすめとは言えません。加熱式タバコにはタバコ葉が使われているので、吸うことで紙巻タバコと同じようにニコチンを摂取してしまうからです。
禁煙を目指してタバコを変えるなら、電子タバコがおすすめです。日本で販売されている電子タバコは、ニコチン入りのリキッドを使っていないので、少なくとも禁断症状に悩まされることはありません。禁煙するための前段階として、電子タバコへの変更を検討してみるのはいかがでしょうか?
自力で禁煙できない時は
残念ながら、タバコに含まれるニコチンには依存性があるので、どんなに努力しても、どうしても禁煙できないことがあります。決して意志が弱いから禁煙できないわけではないので、自分を責めないでくださいね。
禁煙したくてもタバコをやめられないという方は、病院の禁煙治療を受けることをおすすめします。「禁煙外来」という、禁煙したい人のために設けられた専門の外来があるので、一度行ってみてはいかがでしょうか。
禁煙外来は、内科や循環器科などの様々な診療科で対応しています。医師が、その人その人に合った禁煙の方法を提案し、治療の経過を見守ってくれるので、1人で頑張る必要はありません。専門家のサポートを受けられるのは、安心感がありますね。
あまりに依存性が強く、医師が必要だと判断した場合には、禁煙補助薬のような薬が処方されることもあるので、継続して通うことで禁煙を成功させられる可能性が高いです。
2006年から、ニコチン依存症は病気の一種として認識されるようになっているので、条件を満たせば健康保険などを利用し、治療を受けることができます。
禁断症状に打ち勝って禁煙しましょう
長いと2~3週間も続く禁断症状。それだけ辛い症状に悩まされるくらいならタバコを吸い続けていたいと考えてしまいがちですよね。しかし、辛い2~3週間を乗り越え、禁煙を成功させれば、たくさんのメリットを得られます。もっとも大きいのは健康面のメリット。たばこには様々な有害物質が含まれているので、非喫煙者に比べて喫煙者は、がんや脳卒中、心筋梗塞などを発症しやすいことが明らかになっています。今からでもタバコをやめることで、こうした病気を発症するリスクが低下します。
禁煙することは、費用面にも大きなメリットがあります。2020年にたばこ税が増税されたことで、現在は1箱500円を超える銘柄のタバコが増えました。500円のタバコを1日1箱吸っている方が禁煙すると、なんと、1年で18万円もの費用を節約できるんですよ。18万円というと、大型の液晶テレビが買えてしまうくらいの金額です。
今後、さらにタバコが値上がりする可能性も考えられます。今のうちに禁煙しておくことで、将来、タバコを吸うための費用の負担がなくなるのは、とても大きなメリットではないでしょうか?
タバコを吸うことで気分が落ち着き、快感を得られることは事実です。しかし、健康に害が及んでいること、費用面で大きな負担がかかっていることもまた事実。健康や費用などを考えてタバコをやめたいと思ったら、タバコを捨てる・灰皿を捨てるなどして、完全にタバコを吸えないような環境を作ることから始めてください。そして、禁断症状が出ても、決してタバコに手を出さないように注意しましょう。
それでも、「吸いたい」という気持ちが抑えられず、禁煙に失敗してしまうこともあります。万が一禁煙に失敗しても自分を責めず、そして諦めず、再びチャレンジしてくださいね。何度も失敗を繰り返すようなら、禁煙外来に相談することも考えてみてください。