喫煙と肺がんの関係性とは?年齢を重ねてから禁煙しても、もう遅い?
日ごろからタバコを吸う方にとって、喫煙と「肺がん」の関係性は気になるところですよね。しかし心配ではありつつ「今すぐ肺がんになるわけではないし、ゆくゆく気を付ければ良いかな」という気持ちもあるのが、喫煙者の本音ではないでしょうか。
また、何年、むしろ何十年と喫煙を続けている方の中には「今さら止めても、もうあまり変わらないのでは?」と感じている方もいるかもしれませんね。
今回は、喫煙により肺がんのリスクが高まる仕組みと、受動喫煙による影響、禁煙した場合に肺がんのリスクは下げられるのかどうかについて、お伝えしていきます。あわせて「軽いタバコは影響が少ないのか」という疑問にもお答えししますので、ぜひ参考にしてみてください。
本当に喫煙は肺がんと関係があるのか
喫煙により、肺がんが発症しやすくなるということは、科学的に証明されています。喫煙と肺がんの関係性についての研究は、なんと第二次世界大戦前からすでに進められていたそうです。
多くの方がご存じの通り、1日に吸うタバコの本数が多く、また喫煙歴が長い人ほど、肺がんにかかるリスクは高いです。1日に吸うタバコの本数×喫煙年数=「喫煙係数」と言い、喫煙による健康への影響がどれくらい表れやすいかを示す際に使われます。
例えば、20歳から1日1箱、つまり20本のペースでタバコを吸い続けた50歳の方の場合、20(本)×30(年)で、喫煙係数は600となります。喫煙係数が600を超えると「肺がん発生のリスク大」であると言われています。
なぜタバコを吸うと肺がんのリスクが高まる?
肺がんは、肺細胞の遺伝子に傷がつくことで発生します。肺細胞に傷がつく要因はいろいろありますが、中でもタバコの煙による影響がもっとも大きいと言われています。
タバコの煙の中には、現在わかっているだけでも、なんと60種類以上の発がん性物質が含まれています。喫煙により、それらの発がん性物質を吸い込んでしまうことになります。そしてそれら煙に含まれる有害な物質が、喉や気管支、肺の細胞を傷つけてしまうのです。
さらに、吸い込んだ発がん性物質は毛細血管から血液に流れ込み、肝臓や腎臓など他の内臓へも影響をおよぼします。また、唾液にも煙の成分は溶け込むので、胃や食道など消化器官への影響も少なくありません。
このように喫煙は、肺はもちろんのこと他の内臓や器官のがん発症リスクも高めてしまうのです。
受動喫煙では、肺がんのリスクはどれくらい高まるか
受動喫煙とは、他の人が吸っているタバコの煙を吸い込んでしまうことを言います。本人はタバコを吸っていないのに、タバコの煙に含まれる発がん性物質を体に取り込んでしまうため、社会問題ともなっています。
日本医師会の情報によると、タバコを吸っていない人に比べ、喫煙者が肺がんにかかるリスクは男性で4.8倍、女性で3.9倍にも高まるそうです。そして受動喫煙によっても、肺がんのリスクは1.3倍に高まるそうです(参考:日本医師会)。
また、喫煙と受動喫煙の発がんのリスクに関して、厚労省のe-ヘルスネットには以下のような記述があります。
"喫煙および受動喫煙はいずれも「グループ1」と判定されています。この判定結果は、放射線・アスベストなどと同じカテゴリで「がんを確実に引き起こす」という意味です。ちなみにダイオキシンは「グループ2A」であり「発がん性が強く示唆される」というものです。" 引用元:e-ヘルスネット
上記は、国際がん研究機関(IARC)が行っている「発がん性があるとされる物質などについての評価」に関しての一文です。タバコの煙が発がんのリスクを高めることは、喫煙者にとっても受動喫煙者にとっても同じであるようです。
有害物質として有名なダイオキシンがグループ2Aであり、タバコの煙はそれよりもリスクが高いというのは驚きですよね。
タバコの煙は、喫煙者本人はもちろん、一緒に暮らすご家族や喫煙時にそばにいた人の肺がんリスクも高めてしまいます。タバコを吸う方は、常にそれを頭に置いて注意したいですね。
肺がんにかかってしまった場合、どのような治療をするのか
肺がんは、病気の進行具合によってステージ1~ステージ4までの4段階に分類されます。ステージ1がもっともがん進行初期の段階であり、ステージ4がもっとも進行した状態です。
肺がんの治療方法は、このステージによって異なります。ステージ1~2、ステージ3の初期の段階においては、手術を視野に入れ、治療の計画を立てます。ステージ3の中期~後期になると、放射線化学治療が選択肢の1つとして検討されるようになります。
ステージ4の段階となると、がんは他の内臓などにも転移しているため、治療は主に薬物療法となります。この段階になると、手術を行うということは一般的にほとんどありません。
肺がんの治療方法は日々進歩しており、手術の成功率も上がっています。しかしながら、やはり重大な病気であるということには変わりありません。肺がんのリスクは日々の生活習慣で下げることができるので、喫煙の仕方も含め、肺がんにかかりにくい生活を心がけたいものですね。
参考:国立がん研究センタ中央病院 肺がんの診断・治療・手術
軽いタバコの方が、肺がんになりにくい?
健康への影響を考え、低タールや低ニコチンのいわゆる「軽いタバコ」へと変えた、という方は多いと思います。実際、ひと昔前までは「がつんと効く」「ヘビーな味」などを宣伝文句にしたタバコが多くありましたが、最近はあまりそのような宣伝文句を見かけなくなりましたよね。
それに代わるように、「ライト」や「マイルド」などの言葉を使ったタバコの宣伝は目にすることが増えました。健康志向の高まりから、若い世代の喫煙者、また中高年の喫煙者を中心に、ニコチン量やタール量の少ないタバコの人気が高まっているのです。
「ニコチン0.3mg」のタバコ1本に含まれるニコチン量は0.3mgではない!?
タバコの箱の側面に必ず書かれている「ニコチン○○mg タール○○mg」といった表記。実はこの数値は、タバコ1本あたりに含まれる量を表しているわけではないことをご存じでしたか?
この数値は、「一定時間タバコを吸引した際に、吸い込まれるニコチン、タールの量」を表しています。「低ニコチン」をうたっているタバコは、タバコ自体に含まれるニコチンの量が少ないわけではなく、「フィルターなどに工夫をすることで吸い込むニコチン量を減らしたタバコ」なのです。実際にタバコ1本に含まれるニコチンなどの量は、ヘビータイプのタバコとほとんど変わらない、というものもあります。
軽いタバコであっても肺がんのリスクは変わらない
理論上、低ニコチン、低タールのタバコは、体内に入る有害物質の量は少ないとされています。しかしながら、吸い込まれるニコチン量を計測するテストでは、人間ではなく機械で吸引を行います。実際に人間が吸った際には、テストで計測された数値以上の有害物質を吸い込んでしまっている、と言われています。一体、なぜこのようなズレが生じるのでしょうか。それは、軽いタバコは口当たりがよく、一口当たりの満足感が少ないため、機械でのテスト時より深く吸引してしまいやすいからです。洋酒を例に出して考えるとわかりやすいですね。度数の高い強い洋酒をロックやストレートで飲むと、数口でもかなり酔いが回り、満足感があります。人によっては1~2杯で「もう十分」と感じるでしょう。しかしながら、口当たりの良いカクテルや水割りなどにすると、ついつい飲みすぎてしまう、といったことはないでしょうか。
タバコも同様で、口当たりが良く満足感が薄いがゆえに、無意識のうちに深く吸い込んでしまっている、ということがよくあります。中には、軽いタバコに変えたことで1日に吸う本数が増え、むしろ有害物質の吸引量は増えてしまった、という方も少なくありません。
ライト、マイルドはあくまで「味のイメージ」
タバコの商品名などについている「ライト」や「マイルド」は、健康への影響が少ないことを表すのではなく、「タバコの味や香りを表すもの」であると、JT(日本たばこ協会)は発表しています。海外では、このような表記を禁止するよう議論している国もあります。実際、EU域内ではこのような表記をたばこの包装や広告等に使用することが禁止されています。"EU域内ではこれらをたばこの包装や広告等に使用することが実際に禁じられています。これらの議論・規制の根拠は、「『マイルド』『ライト』などの表現は、特定の製品が他の製品よりも健康へのリスクが少ないかのような誤解を消費者に与えうる」というものです。"引用元:JT マイルド、ライトなどの表現(形容的表示)
冒頭でお伝えしたとおり、肺がんにかかりやすいかどうかは、タバコの本数×喫煙年数で考えられます。軽いタバコに変えたとしても、肺がんにかかるリスクはほとんど変わらないと考えて良いでしょう。
何歳までに禁煙すれば、肺がんのリスクは下げられる?
禁煙をはじめたとしても、すぐに肺がキレイになるわけではないということは、広く知られています。では一体、禁煙して何年くらい経てば、肺がんのリスクは下がると言えるのでしょうか。
e-ヘルスネットによると、禁煙後1~9ヶ月ほどで気道の自浄作用が改善し、せきや喘息の改善が見られるそうです。そして5~9年ほど経つと、肺がんのリスクが喫煙を続けた場合に比べて明らかに低下するとのことです。目安として、禁煙後5年で肺がんのリスクは喫煙者の約半分になると言われています。
参考:厚労省 e-ヘルスネット 禁煙の効果
さらに東京大学と国立がん研究センターの研究結果により、禁煙後、男性は21年、女性は11年で、タバコを全く吸わない人と同じ状態の肺に戻ることが判明しています。ちなみにこの結果は、喫煙係数600以上の方でも同じなのだそうです。
つまりかなりのヘビースモーカーでも、11年~21年間禁煙することで、タバコにより高まった肺がんのリスクはリセットされるということです。
とはいえ、例えば男性が40歳で禁煙した場合、肺が完全にキレイになるのは61歳以降ということになります。喫煙歴が長く、年齢を重ねた方の中には「もう今から止めても遅いかな」と考えてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
喫煙により引き起こされる健康被害は、肺がんばかりではありません。禁煙後1年ほどで明らかな健康改善が見られ、2年目以降からは年々、様々な病気のリスクが目に見えて下がっていくと言われています。それを思うと、禁煙をはじめるのに「何歳だからもう遅い」ということはない、と言うこともできます。喫煙を続けるなら、タバコによる健康への影響は知っておきましょう
肺がんとは切っても切れぬ関係であるタバコ。しかし体に良くないとは知りつつも、吸い続けたいという方もいますよね。
喫煙を続ける方も、タバコがどのように健康に影響するのかを具体的に知っておくと、吸い方が変わってくると思います。タバコと健康に関する情報などを積極的に集めてみることをおすすめします。
タバコは自分の健康だけでなく、家族や周囲の人たちの健康にも影響するものです。喫煙する際には、吸う環境はもちろん、吸い方にも気を配りましょう。
少しでも肺がんにかかりにくくするために、まずは無意識で深く吸い込むことをやめるよう心がけたり、1日に吸う本数を減らしてみるなど、取り組みやすい対策をはじめてみてはいかがでしょうか。